桃の花を溺れるほどに愛してる
 でも、やっぱり桃花さんを苦しませたくないから、桃花さんと少しながらでも繋がっていながら、手首を切って死のうとした。

 完全に別れないままで死のうとしたのは、醜くて最低な僕の、ほんのちょっとの、わがまま。

 どこから桃花さんの声がして、僕は目を覚ました。僕は死んでいなかった。桃花さんが僕のことを好きだと言った。あれほど自分のいる場所が天国だと疑ったことは、他にない。

 桃花さんと本当の恋人になれて、より一層、桃花さんを守らなくちゃいけないと思っていたのに、本当、この現状は……なんなんだろう。

 桃花さんの記憶が戻ってしまったら、僕は今までなんのために桃花さんを守ってきたのだろう。

 愛しているから?
 大切な人だから?

 そうだよ。誰よりも愛していて、誰よりも大切な人だからだよ。

 それなのに、結果的に、僕は桃花さんを守れなかったっ!!!

 僕が今まで、桃花さんの記憶が戻らないようにとしてきたこと、すべて、無駄だった……?無駄になってしまった?無駄に終わってしまった?

 はは……。もう、自分が情けなくて、情けなさすぎて、涙が出る。

 桃花さん。

 失った記憶からあなたのことを守れなかったこと、本当に、本当に、申し訳ございませんでした……。
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