桃の花を溺れるほどに愛してる
　部屋に戻った私は、ベッドの上でチカチカと点灯している携帯電話に気が付く。

　その点灯は、メールの着信を知らせる色をしている。

　だれからだろう？

　何気なく携帯電話を開いた私は、「ヒッ！」と思わず小さな悲鳴をあげた。

　携帯電話のトップ画面には、“新着Ｅメール ２３件”と表示されていたのだ……。

　こんなに大量のＥメール……どういうこと？

　恐る恐る中身を開いて、私はゾッとした。Ｅメールの発信源は、すべてストーカーこと春人からのものだった。

　中身は……。

　“今桃花さんと離れたというばかりなのに、とても心細いです。またすぐにでも桃花さんとお会いしたいです。”

　“寂しいです。”

　“寂しい寂しい寂しい寂しいさみしいさみしいさみしいさみしいサミシイ……”


「ふっざけんなぁっ！」


　反射的に携帯電話をベッドの上に向かって投げ付けていた。

　無視よ、無視！こういうのは無視に限る！

　……。

　――あっ。そういえば、アドレス帳の春人の登録名……ストーカーのままだったな。

　……、仮にも恋人になったのだから、ちゃんと名前で登録し直してやるか。

　再び携帯電話に手を伸ばしたその時、Ｅメール着信の音楽が鳴った。

　まさか……とは思いつつ、中身を確認してみる。予想通り、春人からだった。


「……うん。もうしばらくはストーカーのままにしよう」
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