桃の花を溺れるほどに愛してる
 さっきまで京子と春人が楽しげに会話していたため、車の中は明るさに満ちていたけど……。

 京子がおりた途端、車の中はなんとも言えない暗い雰囲気に包まれた。

 なっ、なにこれ……気まずっ!!!超気まずいっ!!!


「……あのさ」

「……桃花さん」


 うぉぉぉおおおっ!何か会話しようと口を開いた結果がコレだよ!同時に口を開いてお互いがお互いに話し掛ける結果になっちゃったよっ!


「あー、春人からどうぞ?」

「いえいえ、桃花さんからどうぞ!」


 そもそも私、何も話題……考えてないし……うん!やっぱりここは春人から話すべきだよね!


「私のことはいいから、春人から話して?」

「そうですか?それじゃあ、恐縮ですが、僕から話させて頂きます……」


 おっ、おう!……っていうか、春人は何を話すつもりなんだろう?

 「別れてください!」だったら、それはそれで願ったり叶ったりだなぁ……。


「桃花さん、」

「なに?」

「すみませんでしたぁっ!!!」


 ……は?

 いや……いきなり謝られても……あの、その……とても困るんですが……。


「ちょっと、春人?」

「先程から機嫌が悪いのは僕のせいですよね?!すみませんでしたぁっ!悪いところは全部直します!ですから、お願いですから、嫌わないでください……!」
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