桃の花を溺れるほどに愛してる
 いや……まぁ、確かに機嫌が悪いのは全面的に春人のせいだけど……仮にもアンタは大の大人だろ?!大の大人が女子高生相手に全力で謝るって、いいのかそれでっ?!アンタにプライドっていうものはないのかっ?!


「……信号、青」

「あっ、すみません」


 信号が赤から青になったことを告げると、春人はまた運転を再開した。

 そこからまた、車の中は微妙な雰囲気に包まれた。このままだと息苦しい他ないので、私は仕方なく口を開く。


「あのね、私、別に怒っていないから」

「……嘘はよしてください」


 ……お見通しってか。


「別に嘘なんて……」

「ついています。僕がどれだけ桃花さんを見守ってきたと思っているんですか」


 いや、ホントにどれだけ見守ってきたっていうのよ?……別に知りたかないけど。


「……」

「僕は桃花さんのことなら、なんでも理解しているつもりです。今、僕のせいで怒っているのも分かっています。ですから僕は桃花さんに許してほしくて……桃花さんには嫌われたくはなくて……」


 ……こうやって春人の言葉を聞いていると、切実に私のことが好きなんだなぁ、と実感させられた。

 春人にとって私に嫌われるということは、“死”以上につらいことなのかもしれない……。
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