桃の花を溺れるほどに愛してる
「あー、もう。分かった、分かった。確かに怒ってはいたけど、今はもう怒ってないから。だから、ね?もう謝らなくてもいいから……」

「……本当ですか?」

「うん。っていうかさ、あまりにもとんとん拍子すぎて、昨日の今日とて私に彼氏ができたことに実感がないんだよね……だから怒っているというよりも、実感ができていないだけなのよね」

「え……」


 あと、ストーカー(春人)にあまり関わりたくないのと、ストーカー(春人)に絡まれたくないっていうのも事実かな。これは流石に言わないけど。

 まぁ、単調に言うと、私は春人を彼氏だと認めていないというか、彼氏だと1ミリも思っていないんだよね。

 私のことをなんでも知っているストーカー……あるいは、ただの変態?……うん、それくらいの認識なんだよね、春人って。

 昨日の今日で友達とは言わないだろうし、こうやって送ってくれるのを見ていると都合のいいお兄さん……?いや、やっぱりストーカーだわ。都合のいいストーカーだわ。


「桃花さん」

「なによ?」


 突然、道の端に車をよせた春人は、こちらに身体を向けて顔を近付けてきた。


「えっ……?!」


 グンッと近くなる私と春人の顔の距離。なにこれ、いくらなんでも近すぎでしょ……?!
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