桃の花を溺れるほどに愛してる
 どうしたらいいのか分からず、口をぱくぱくとさせている間にも、春人は顔を近付けさせてきた。

 って、キャーッ!!!

 今、気付いたんだけど、京子はさっき家まで送ってもらったじゃん?!ということは、今、この車の中って、私と春人の2人きりということに……っ!

 このままだと誘拐からの監禁っていう流れ、フツーにあるよ?!フツーに考えられるよ?!どうしようっ?!


「あっ、あああ、あの、はるっ……」

「桃花さん……」

「っ……」


 誘拐からの監禁という問題も一大事だけど、今のこの顔が近いという方が一大事だった……!

 顔、近ぁっ!鼻と鼻が触れそうなくらいには近いっ!えっ?!なにこれ?!もしかして私、このままキ、キキキ、キスッ、されるのっ?!

 うっそーんっ?!仮にも恋人なのだとしても、私は春人のこと、どうとも思ってないんだからねっ?!好きじゃないストーカーにファーストキスを奪われるって、どういうことなの……!


「好きです」


 あわわわ……甘い顔をしたイケメンフェイスがあああ……私のすぐ目の前にいいい……っ!!!


「むっ……」

「“む”?」

「無理ぃいいいっ!」


 次の瞬間、私の身体は勝手に動いており、春人の顔面におもいっきり平手打ちを食らわせてしまっていた。
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