桃の花を溺れるほどに愛してる
“こんな時間にメールを送ってしまって申し訳ございません。あなたにこの文章を読まれているのだと思うと、とても嬉しく思います。今は授業をしている最中でしょうか?あなたの勉強している可憐で美しい姿が頭の中に思い浮かびます。そのお姿をすぐ間近で拝見出来ないことが、悔しい限りです。ですが、忘れないでください。僕はいつも、いつでも、いつまでも、あなたを見守っています。”
なんっ……じゃこりゃ!!!
授業中だというのに、思わず叫びそうになってしまった。すごく鳥肌がたっている。寒気がする……!
見なきゃよかった……と激しく後悔しつつ、私はそっと携帯電話を閉じた。
うう、メールは消しちゃダメ……。こんな気持ちの悪いメールでも、立派な証拠品になるのだから……。
心の中で何度も繰り返し自分にそう言い聞かせ、私は携帯電話をポケットにしまった。
――キーンコーンカーンコーン。
3時間の授業が終わるチャイムの音が、校内に鳴り響いていった。
それ以降、下校時間になるまで間、知らないアドレスの気持ちの悪いメールが送られてくることはなかった。