桃の花を溺れるほどに愛してる

“こんな時間にメールを送ってしまって申し訳ございません。あなたにこの文章を読まれているのだと思うと、とても嬉しく思います。今は授業をしている最中でしょうか?あなたの勉強している可憐で美しい姿が頭の中に思い浮かびます。そのお姿をすぐ間近で拝見出来ないことが、悔しい限りです。ですが、忘れないでください。僕はいつも、いつでも、いつまでも、あなたを見守っています。”


 なんっ……じゃこりゃ!!!

 授業中だというのに、思わず叫びそうになってしまった。すごく鳥肌がたっている。寒気がする……!

 見なきゃよかった……と激しく後悔しつつ、私はそっと携帯電話を閉じた。

 うう、メールは消しちゃダメ……。こんな気持ちの悪いメールでも、立派な証拠品になるのだから……。

 心の中で何度も繰り返し自分にそう言い聞かせ、私は携帯電話をポケットにしまった。

 ――キーンコーンカーンコーン。

 3時間の授業が終わるチャイムの音が、校内に鳴り響いていった。

 それ以降、下校時間になるまで間、知らないアドレスの気持ちの悪いメールが送られてくることはなかった。
< 6 / 347 >

この作品をシェア

pagetop