桃の花を溺れるほどに愛してる
「あっ、はい。助かりました。ありがとう、ございます……」


 そこで私は、初めて助けてくれた若い男性の顔を見た。

 明るい色素の茶色のゆるゆるとした髪、垂れ目ながらも真ん丸とした瞳はブラウン色をしていて……。

 とても、整った顔立ちをしていた。それこそモデルやアイドルをやっていてもおかしくないような顔立ちだった。

 ――つまり、イケメン。いや、美しいと言った方がいいのかもしれない。それはとても綺麗な人だった。


「……」


 しばらくの間、その綺麗な顔立ちに見惚れていると、男性は不思議そうに首を傾げた。

 いかん、いかん。いつまでも見つめていたら不審がられるわよね……!

 私は慌てて男性から離れ、お礼の意味もこめて頭をぺこりと下げた。

 うわぁー……こうやって立って並んでみると、すらりとした体型だし、身長も高いし……さぞかしモテるんだろうなぁ、まぁ、私には関係ないけど。


「えっと、それじゃあ……!ありがとうございました……っ!」


 男性に背を向け、歩き出そうとした瞬間――何者かが私の手首を掴んだ。

 そっと視線を落とし、掴んだ手の持ち主をたどっていくと……やっぱり私を助けてくれた綺麗な男性だった。
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