桃の花を溺れるほどに愛してる
 今の時間は昼の3時を少し過ぎた頃……。

 家には、だいたい晩ご飯の20時頃までに帰ればいいので、まだ時間は5時間くらいの余裕があるわけなのだけど……。

 春人は、そのギリギリな時間まで私と一緒にいたいとは……思わないのだろうか……?

 長年、私のストーカーをやってきているのなら、私が20時頃までになら帰らずに遊んでもいいこと、分かっているはずなのに、な。


「ねぇ、春人」

「はいっ?どうかしましたか?桃花さん」

「春人はさぁ……その……」

「……」

「……あの……」

「……」


 うっ、なんか気まずくなった。

 私の言葉に耳を傾けてくれているのだと思うと嬉しいのだけれど、無言が長く続くと……ね。

 何か話さなくちゃいけないことは分かっているんだけど……うー、何を言えっていうのよ?!

 「まだ一緒にいたいなっ★」って、きゅるるんって効果音がなりそうなほどに可愛く、そしてオプションとして上目遣いで言えってか?!

 はっ!私みたいな対して可愛くないヤツがそんなふうに言ったら、みんな気持ち悪がって吐くっちゅーの。


「海遊館や動物園……だっけ?アンタが行きたがっていたの」

「ああ、はい!桃花さんと一緒に行けたらなぁ……なんて」

「……別に、行ってあげても、いいわよ」


 わーっ!バカ、バカ!私のバーカーっ!

 「行ってあげても、いいわよ」とか、なにその可愛いげの無さっ?!
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