赤の鎖
「もう....逃げないでね?」
ヒカルが、まるで抱きしめるように私のカラダを包む
実際、私は実体のない生き物だから、彼が私に触れることは不可能なのだけど
無言で小さく頷く
パサリと鬱陶しい黒髪が顔の側面を覆う
そうすると、意識したわけではないが、髪の毛の隙間から部屋の隅にある押入れに目がいった
あそこに....私の“本体”がある
息をしない私のカラダ
もう腐っているだろうか
何故か異臭がしないが、私は自分の死体を見るのが怖くて、あの扉を開けたことはない
警察に言おうにも、私の声はヒカル以外には通じない
時々思う
私の声は、彼以外の誰にも届かない
そんな状態で、私は本当にヒカルに復讐が出来るのだろうか
今も昔も
所詮、私はヒカルの玩具だ