カリス姫の夏

珍しい。
華子さんにしては優しいっていうか、気前がいいっていうか……


「その代わり、バイト代は交通費と夕食代くらいしか出ないからね。
グッズ買ってたら赤字になるよ」


きぃぃーーー!!
やっぱり悪魔だ。


華子さんとこの部屋にいたら気分が悪くなる。目的もないが、ドーム内を見て回ろうとドアを開けた。


救護室には会場側と外側、二カ所にドアがある。会場側のドアを開けると、目の前にフーズコーナーが広がった。


ハンバーガー。
カレーライス。
ラーメン、そば、うどん……

街でもよく見かけるフランチャイズ店の名前が並ぶ。


コンサートはもう始まっていて、フーズコーナーにはお店のスタッフ以外、人はおらずガランとしていた。


会場からは、テレビをほぼ見ない私でも聞いたことのある音楽が響く。会場を取り囲む通路を、店をのぞき込みながらのんびり歩いた。

映画館のスクリーン並みのモニターが目に入った。そこには、若い男性がスタイリッシュに踊る映像も流れている。しばし、眺めたが、興味のないものは心踊らない。


結局、疲れた老人のように背中を丸めフーズコーナーにもどった。


お腹すいた。
なんか食べようっと。
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