カリス姫の夏
機嫌の悪い理由は本当のところ、自分でもよく分からない。もし、はっきりしたとして説明できるわけもなく、出来得る防衛策は聞こえないふりをするだけだ。
コップに残った牛乳を飲みほし、勢いよく立ちあがった。
「わたし、今日午後からバイトだから」
「ああ、そうなの。
うん、うん。
気をつけてね。
今日、夕方から雨だって天気予報で言ってたから傘持っていった方がいいよ」
お母さんは、腫れものにでもさわるように遠慮がちに言う。私は「んー」と気の無い返事しかできない。
ダイニングの窓から、空を見上げた。
空は雲一つ無い快晴で、雨の気配さえ感じさせない。夕立ちになるのだろうかと、ぼんやり天気を予報した。
ある意味、健康的なのかなと、自分自身に問いてみる。
どこかで藍人くんと繋がる気がして、ネットはあの日からしていない。となれば、遅くまで起きていたとすることもない。
不本意ながら今まででは考えられない時間にベットに入り、眠りにつくよう努力することとなる。
でも、眠れない。
神経が覚醒し、脳細胞は思い出したくない映像を何度も繰り返し再生する。
それは、あの夏祭りの夜。
隣を歩く、藍人くんの左手。
藍人くんが買ってきてくれた、綿あめ。
一緒にいて幸せだと言ってくれた、甘いセリフ。
そして、最後に藍人くんが残した意味深な言葉と、困惑した表情。
結果的に、意識は休息を許されない。
やはり、健康的とは程遠いようだ。
コップに残った牛乳を飲みほし、勢いよく立ちあがった。
「わたし、今日午後からバイトだから」
「ああ、そうなの。
うん、うん。
気をつけてね。
今日、夕方から雨だって天気予報で言ってたから傘持っていった方がいいよ」
お母さんは、腫れものにでもさわるように遠慮がちに言う。私は「んー」と気の無い返事しかできない。
ダイニングの窓から、空を見上げた。
空は雲一つ無い快晴で、雨の気配さえ感じさせない。夕立ちになるのだろうかと、ぼんやり天気を予報した。
ある意味、健康的なのかなと、自分自身に問いてみる。
どこかで藍人くんと繋がる気がして、ネットはあの日からしていない。となれば、遅くまで起きていたとすることもない。
不本意ながら今まででは考えられない時間にベットに入り、眠りにつくよう努力することとなる。
でも、眠れない。
神経が覚醒し、脳細胞は思い出したくない映像を何度も繰り返し再生する。
それは、あの夏祭りの夜。
隣を歩く、藍人くんの左手。
藍人くんが買ってきてくれた、綿あめ。
一緒にいて幸せだと言ってくれた、甘いセリフ。
そして、最後に藍人くんが残した意味深な言葉と、困惑した表情。
結果的に、意識は休息を許されない。
やはり、健康的とは程遠いようだ。