カリス姫の夏
その時、突然背後からかわいらしい女の子に声が。
「ねえ、これって織絵ルーナのグッズだよね」
間近な声に身構え後ろを見ると、そこには私と同年代の女の子がクリーム色のパジャマを着て立っていた。女の子は、私のポシェットに付いているマスコットを指差しほほ笑んでいる。白い肌を頬だけピンク色に染めて。
背丈はヒョロッと高いが細い少女は、並ぶと貧弱な私が頑丈に見えそうなほどだ。ふんわりとした明るい色のショートボブがそのスレンダーな体型によく合っている。
その姿は手摘みすると花弁の落ちていまうコスモスのようで、初秋の清々しさを感じさせる子だ。
「うっ、うん。
知ってるの?織絵ルーナ。
好きなの?」
と、ついつい私の声は上ずる。
「うん、大ファン!
ねえ、これ、この前のツアーのグッズでしょ。
行ったの?
チケット取れた?」
私につられてか、彼女の声も裏返る。
「取れなかったー。
でもね、オフィシャルのホームページでグッズ販売して、いっそいで買っちゃった」
「えーー!
いいなー。
私、乗り遅れちゃったんだよね。
入院中で、好きな時ネットできないからすぐ申し込みできなくって。
買い損ねちゃったのよ。
これ、限定品でしょ。
オークション出ないかなー。
出たら、どんな汚い手使っても手に入れるんだけど」
コスモスちゃんは、可愛い顔に似合わない事を言う。でも、なぜだか一瞬にして意気投合した。