カリス姫の夏
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郊外にあるイベントを中心にとり行われるホールは、お盆休みも終わった平日だというのに、某アイドルユニットのコンサート前のようなにぎわいだ。
意味不明のテンションの高さと、客の年齢層がかぶっている。初対面のはずの客同士が、実はツイッターなどで繋がっていて一瞬にして意気投合する様もよく似ていた。
要所要所で待機するコスプレイヤーとの写真撮影はバーチャルアイドルのイベントではお約束で、楽しみの一つでもあった。
切望していたイベントに来れたことがよっぽど嬉しいのだろう。久しぶりの外出にみゅーは、はしゃいだ。キャーキャーと騒ぎながら、右に左に走り回るみゅーに普段の大人の表情はない。
みゅーは8センチの厚底サンダルを履き身長こそ20センチ近く差をつけられたが、今日ばかりは年齢通りの立ち位置を確保できそうだ。
私はお姉さんの顔で楽しそうなみゅーを見守り、華子さんに無理を言っても来られて良かったと心底思った。
一通り見て回り、欲しいグッズも予算の許す限り買った。心残りが無いと言えば嘘になるが、時間制限のある中、希望の場所は見れたと2人とも満足だった。
「ねー、見て。
あれ、この前のライブ映像だよね。
うわー、いいなー。
わたしも行きたかったー」
みゅーが指差すオーロラビジョンでは、持ち歌を熱唱する織絵ルーナが。