カリス姫の夏
休憩所のパイプ椅子に座り、2人は興奮を鎮めようとしたが、会話しているとますます熱が上がる。
「来年もライブするよね。
あー、来年はチケット取れるかなー」
と興奮を抑えきれず私が言うと、みゅーも
「うん、絶対とってやる」
と意気込む。
「来年春の予定だってね。詳しい日程はまだ出てないけど。
ねえ、今度は一緒に行こうよ。
みゅーも退院近いんでしょ」
みゅーは大きく頷いた。
「うん、このまま順調なら夏休み明けには退院できるって。
二学期からは学校行けるかも」
「そっか。
学校に戻ったら、別にわたしと行かなくても友達と行けるよね……」
少し淋しい気持ちになり暗い表情になった私に気遣ってか、みゅーは大きくかぶりを振った。
「ううん、わたし実はね、織絵ルーナのファンだってこと隠してるの。
だってさ、絶対ヲタクだって思われるでしょ。
いや、実際そうなのかもしれないけど……
でも、JKの中じゃ少数派じゃない。
肩身狭いんだよね。
だから、学校では仮面かぶってるの」
「わっかるーーー。
わたしも学校では言えない」
2人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。なんだか、心の底から笑ったのは久しぶりのような気がする。
本心を言うことはネットの中でもできた。動画の映像を見て笑うこともあった。だけど、なんだろう。この心が温まるような感覚は。
自分の気持ちにもう一つの感情がコンフュージョンしていくような感覚は。