カリス姫の夏
みゅーの病室に近づくと、案の定、みゅーのお母さんの不機嫌そうな声が聞こえた。
「だから、外出はまだ無理だって言ったのよ」
私は一瞬入るのをためらったが、華子さんはスタスタと病室に消えて行く。逃げ出すわけにもいかない。私も急いで後についていくと、そこには今まで見たこともない表情で深々と頭を下げる華子さんがいた。
「本当に申し訳ありませんでした。
看護師がついていながら、このようなことになりまして」
「いえ、やっぱり私がついて行かなかったのが悪かったんです。
私がついていけないなら外出しないほうがよかったんですよ」
と、お母さんはイライラを隠せない。
そんな母親に、病院食をベットの上で食べながらみゅーは反論した。
「えーーー。
今回はたまたまだよ。
低血糖なんてずぅぅっとおきてなかったじゃん。
お母さんがいたって、おきるときはおきるし」
「お母さんがいたらもっと早く対処できてました!
だいたい実悠だって不注意なのよ。
うれしくって走り回ってたんでしょ。
低血糖になるって分かりそうなもんじゃない!!」