カリス姫の夏
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夜勤明けの看護師は崩れた化粧を気にもとめず、とりあえず無事仕事を終えた達成感をやつれた顔からのぞかせた。それでも病院にいる間は仕事だと、自分自身を叱咤(しった)しながらふらふらと病棟を出て行く。

対照的に日勤を始める看護師達は、異様なほど元気に朝の挨拶をしながら病棟を巡視してまわっていた。


その日勤者に見つからないよう小さくなって、私はみゅーの病室を訪れていた。
出発前にどうしてもみゅーの様子を見たいと言う私の駄々(だだ)を、華子さんは珍しく聞き入れてくれたからだ。


「みゅー、大丈夫?」

みゅーのベットを四方取り囲んでいたカーテンの隙間からそっと顔を入れ、私は挨拶より先にみゅーの健康状態を気遣った。


「うわっ、莉栖花。
早っ」

と、みゅーも挨拶は捨てて、驚きの言葉を最低限の言葉で表す。


「ごめんね、こんなに早く」

と、謝りながらカーテンの間をすり抜ける。そして、勧められてもいないのに丸椅子に腰かけた。


「みゅー、体調は大丈夫?」

と、私が聞くとみゅーは

「身体はね。
でも、精神的には最悪よ」

と、顔をゆがめた。


「昨日、あの後、主治医の先生にこっってり絞られちゃって。
低血糖おこしそうなの自分でも分かるだろう、とか、何年患者やってるんだとか……
挙句の果てに、刑期が……入院がね、半月伸びちゃって……
執行猶予もつかないんだよ。
ひどいでしょ。

あっ、でも、莉栖花のせいじゃないから、気にしないで。
まっ、しゃあないよ、半月位……ねっ」

みゅーの心遣いが私の心に染みた。
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