カリス姫の夏
私は居ても立ってもいられず、藍人くんのスマホをのぞきこんだ。
「あっ……」
スマホの画面に現れた文字の羅列に、藍人くんの口からは思わず音が漏れたが、私の唇は小刻みに震えるだけで声を出すこともできなかった。
藍人くんは言われたとおり『桐生さやか』で検索した。
その下には関連ワードが羅列されている。それは個人名に限らず、単語であれば当然行われるであろう、ネット上のお約束だ。
『桐生さやか』にくっついてきた関連ワード……それは……『美人医師』『元カレ』に続き
『精神病』
の文字。
戸惑う藍人くんを待ち切れず、私はスマホをうばい取ると『精神病』に矢印を合わせた。
音も無く次々と並ぶ文字の羅列は、あまりにも残酷で開かなくても心無い中傷であることはすぐに分かった。
『美人医師 桐生さやかの本当の病名は精神病だったWWWW』
『桐生さやかが精神病になった草理由』
『(画像あり)入院前から変だった桐生さやかの言動』
そう、ネット上ではよくあることだ。その真偽(しんぎ)は分からないが、第三者で見ている分には正直どちらでも構わなかった。
面白い、刺激的な話題であれば食いつくし、興味が無ければ開きもしない。
こういうサイトを立てる人間は、できるだけたくさんの人に絡んで欲しいという欲望だけだから、できるだけ興味をそそるよう題名はできるだけ過激にする。
ピックアップされるのはどうせ有名人。いつもなら「また、なんかやらかしたのー」なんてさして気にもしなかったのだけれど。
それが自分に近い人間の身に降りかかった途端、全人類の悪意を集中攻撃されているような恐怖心が生まれた。
「なんで?
病気のことなんて個人情報じゃない。
こんなことネットに出したらだめだよね。
なんで……誰がこんな事を……
どうして……こんな事を…」
やっとの思いで絞り出した私の力無い抗議を、華子さんが回答に代わる言葉を投げかけた。その声はあくまで厳しい。教えてやる気なんてさらさら無い。自分で決着つけろと突き放している。
「子リス。
あんただって本当は気づいてるんでしょ。
誰がこんな事をしているのか。
気づいてて現実から目を反らしてるんじゃないの?
でもね、それじゃあ前に進めないんだよ。
確かめなさい!自分の目で」
「あっ……」
スマホの画面に現れた文字の羅列に、藍人くんの口からは思わず音が漏れたが、私の唇は小刻みに震えるだけで声を出すこともできなかった。
藍人くんは言われたとおり『桐生さやか』で検索した。
その下には関連ワードが羅列されている。それは個人名に限らず、単語であれば当然行われるであろう、ネット上のお約束だ。
『桐生さやか』にくっついてきた関連ワード……それは……『美人医師』『元カレ』に続き
『精神病』
の文字。
戸惑う藍人くんを待ち切れず、私はスマホをうばい取ると『精神病』に矢印を合わせた。
音も無く次々と並ぶ文字の羅列は、あまりにも残酷で開かなくても心無い中傷であることはすぐに分かった。
『美人医師 桐生さやかの本当の病名は精神病だったWWWW』
『桐生さやかが精神病になった草理由』
『(画像あり)入院前から変だった桐生さやかの言動』
そう、ネット上ではよくあることだ。その真偽(しんぎ)は分からないが、第三者で見ている分には正直どちらでも構わなかった。
面白い、刺激的な話題であれば食いつくし、興味が無ければ開きもしない。
こういうサイトを立てる人間は、できるだけたくさんの人に絡んで欲しいという欲望だけだから、できるだけ興味をそそるよう題名はできるだけ過激にする。
ピックアップされるのはどうせ有名人。いつもなら「また、なんかやらかしたのー」なんてさして気にもしなかったのだけれど。
それが自分に近い人間の身に降りかかった途端、全人類の悪意を集中攻撃されているような恐怖心が生まれた。
「なんで?
病気のことなんて個人情報じゃない。
こんなことネットに出したらだめだよね。
なんで……誰がこんな事を……
どうして……こんな事を…」
やっとの思いで絞り出した私の力無い抗議を、華子さんが回答に代わる言葉を投げかけた。その声はあくまで厳しい。教えてやる気なんてさらさら無い。自分で決着つけろと突き放している。
「子リス。
あんただって本当は気づいてるんでしょ。
誰がこんな事をしているのか。
気づいてて現実から目を反らしてるんじゃないの?
でもね、それじゃあ前に進めないんだよ。
確かめなさい!自分の目で」