カリス姫の夏
藍人くんに教えられた現実が、私の心に深く突き刺さった。
「ナイトが?
ナイトの国を閉鎖したの?
なんで?
ああ、そっか。
分かった。
怒ったんだ。
私達が勝手なことばっかりするから、呆れたんだね。
そりゃ、そうだよね。
付き合いきれないよね、ナイトだって。
私達……
ううん、私がバカだから。
困ったことがあるとすぐに頼って、みんなのこといいように使って。
で、自分に迷惑かかったとたんに悪者扱いして。
みんながこんなことしたのだって元をただせばわたしが悪かったのに。
最低だよ。
本当に私が……
私が……悪かったんだ」
さやかさんを見ると両眉を下げ、憂いに満ちた表情で頭を振った。『そんなことはないよ』となぐさめがテレパシーのように伝わる。
藍人くんは私を守ろうと、必死で支えてくれている。手を離したら崩れ落ちるか、どこかに飛んで行ってしまうと承知しているかのように。
誰も私を責めようとしない。叱ってもくれない。私はすがるように、華子さんを見た。
「ねえ、華子さん。
わたしがバカだったんだ。
わたしがこんなことを起こしちゃたんだよね」
初めて見せる表情の華子さんに、私は最後の望みを託した。
「莉栖花」
華子さんはこんな時に限って、初めて私を名前で呼んだ。
「あんたは……悪くない。
なんにも」
華子さんの言葉が、私の中でせき止めていた感情の防波堤を壊した。押し寄せる感情の波に、私はただ流されて行く。
「華子さん、ずるいよ。
こんな時に限ってそんな言葉……
らしくないよ。
全然、らしくない。
いつもみたいにさ、あんたはガキでバカだって散々こきおろしてよ。
毒舌浴びせて、けちょんけちょんに踏みつけてよ。
こんなの……こんなの華子さんらしくない。
ずるいよ、ずるいよーー」