カリス姫の夏
華子さんは微動だにせず、私をじっと見つめた。私の八つ当たりを身をひるがえすこともせず全身で受け止める華子さんの優しさが、私には何よりも辛かった。
「あっ…
あっ…
あぁぁ…
うわぁぁぁぁぁーーーー」
雑巾でも絞っているかのように全身を締めあげられる苦痛に、悲鳴にも近い泣き声をあげた。
なんでこんな事に、なっちゃったんだろう。
私達、どこで間違ったの?
どうすれば良かったの?
そんな、反省も後悔も今はどうでもいい。理性的な感情とは無関係に、悲しいとしか表現できない感情が溢れて留まる所を知らなかった。
そっと私の前に回った藍人くんの胸に顔を埋め、全身を震わせて泣きじゃくった。冷え切った心を温めるように藍人くんに優しく抱きしめられても、悲しみの波は次々と押し寄せてくる。
夕暮れが近づく気配に秋の訪れを悟ったのか、セミたちはいっせいに鳴くのを止めた。どんなにあがいても過ぎた時間を取り戻す事はできないのだと、指南しているかのように。
けれども、今の私にはそんな儚い命をかけた贈り物を素直に受け入れる余裕さえない。
身体中の水分が無くなりカラカラに干からびるまで、私の涙は流れ続けた。