カリス姫の夏

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北海道の南にある小さな町から更に西へ向かうと民家もまばらとなった。幼いころ、母方のおじいちゃんに会いに行った東北地方の田舎で見たような景色に懐かしさも感じる。


車内で数時間の睡眠を取り、ほんの少しパワーを回復した石井さんは、朝一でさやかさんを送り届けようと交通ルールを守りながらの運転を続けた。


助手席の華子さんはさやかさんを発見した時点で仕事が終わったと勝手に処理したのだろうか、助手席でぐうぐう睡眠をむさぼっている。


一方、同じく一睡もしていないはずのさやかさんは興奮しているのか、その大きな瞳をらんらんと輝かせ、止まらないおしゃべりを降り注ぎ続けた。たわいのないガールズトークが新鮮なのか、さやかさんは女子高生のようにはしゃぎながら会話を展開する。


睡眠不足で意識がもうろうとし生返事する私に、さやかさんは呪文のような言葉を残した。


「後1年……ううん、半年したら女の子は変わるのよ。
目にする物全てが輝いて見えて、でもその中でも自分が一番輝いてるんだって胸を張って言える時が絶対来るから。

ホントよ」


さやかさんは自信満々で言いきったが、私にはとても信じられない。さやかさんみたいな美人と私みたいな一般人は、歩む道も立っているステージも別だと思う。私にそんな日が来るとは、到底思えない。


それでも、さやかさんの心地よい声のおかげだろうか。あるいは、もうろうとした意識が催眠術にでもかけられていると勘違いしたのだろうか。さやかさんの言葉は素直に私の中に入り、心の奥に刻み込まれた。




車は対向車をかろうじて避けられるほどの細い道を30分以上走り右折すると、もっと細い山道へと入った。クネクネと蛇行する山道を通り抜け、見晴らしのいい高台にある冷たいコンクリートの建物に車が到着したのは、早朝6時を回った頃だった。





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