カリス姫の夏
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カリス
<みんな聞いて
悪魔ナースにたかられた
朝ご飯ごちそうしやきゃなんない
>マジ?
ひどいな
ごはんに毒もれ
>カリス姫 バイト?
昨日来なかったから淋しかったよ
>主も夜勤
只今仕事中
>仕事中ネットまずいでしょ
ユルイね
>悪魔ナース
徹底的に叩いてやれ
名前教えてくれたら反撃しちゃる
カリス
<ありがとう
でも みんなと話してたら
気が晴れた
大人なのでガマン ガマン
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「また携帯かい?
今の子は携帯やってないと生きてけないのかね」
助手席で目を閉じじっとしていた華子さんが、チラリと私の方を見え返り、嫌味を口にした。マジで『ナイトの国』のみんなに叩いてもらおうかなんて悪意が芽生えてくる。
そんな私に石井さんが助け舟を出した。
「ネットかい?
いや、俺もやってますよ、ツイッター。
まっ、たいしたこと書いてないですけど……
仲のいい友達とフォローし合って」
「石井、ツイッターなんてやってるのかい?
気持ち悪いね。
有名人気取ってんじゃないよ」
華子さんの毒舌は気持ちいいほど、分けへだてない。それでも石井さんは華子さんとの付き合いが長いらしく、苦笑いで応戦した。
「いや、吉元さん。
そんなんじゃないですよ。
独り言、独り言。
本名ハンドルネームにしてるから今度見てみてよ、多部さん。
石井 勝也。か・つ・やだから、ねっ」
「あっ、はっ……はぁ…」
せっかく助けてくれたというのに、私の返事には心がこもっていない。私になおざりにされた事に気づかず、石井さんは照れを隠すように笑った。
「ハハハ……
まっ、大した事、書いてないけどね」