カリス姫の夏

「カリス姫ね。
可愛いじゃない。
今度、動画見てみるね」


人間のできている石井さんはさして興味もないだろうに、話を合わせてくれた。リアルで知っている人に見られるのは極力避けたいと思っていたが、石井さんの言葉が優しさからでた口約束だと分かっていたので、さして気にはならなかった。


どうせ、もう会うこともないだろうし……
内心、そう思っていたから。


「じゃあさ、多部さん。
将来、そういう関係の仕事につくの?
ほら、プログラマーとかSEとか」

と石井さんは訊く。


「いえいえ、私は趣味の範囲なんで。
仕事にしちゃったら楽しめないっていうか、それほどの意欲もないっていうか」


「ふーん。
もったいないなー」


長距離運転の眠気覚ましにもならない話題に、調子を合わせてくれる石井さんに申し訳ない気分になる。私はスマホを開き、再び『ナイトの国』にこもった。
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