INSIDE BLUE
そのあと、詩依が買ってきた炭酸飲料を飲みながら砂浜に並んで座って休憩した。
しばらくぼんやりしてから、二人で砂の城を作ってその完成度の低さに二人して笑って(城というか不細工な山にしか見えなかった)、夕日を待たずに電車に乗った。
「今日はありがとうね」
薄暗くなった地元の駅で、詩依は綺麗に微笑んで言った。
「…こんなんでいいんなら付き合うよ」
そう言うと、なぜか少し寂しそうな顔をした。気がした。
「ほんとに?また声かけるね」
…なんか、わかりにくい。本心が見えにくいというか、壁なんてまったくないように見えて実は頑丈な壁があるというか。
「わかった」
詩依は小さく手を振って、背を向けて俺の家とは逆方向に歩いていく。
「――詩依っ」
初めて名前を呼んだ。
「なあにー?」
ふり返った詩依が首を傾げる。
「写真、ちゃんと見せろよ」
「――うん!もちろんだよ」
詩依は笑って、さっきよりも少し大きく手を振って、今度こそふり返らずに帰って行った。
メールアドレスを渡されたあの夜みたいに、俺はなんとなくその後ろ姿を見送っていた。