INSIDE BLUE


「今日メールするね」

 ありがとう、の代わりに微笑んで言われた。

 …心臓が大きく音を立てたのはきっと気のせいで、かなりテンションが上がってしまったのもきっと気のせいだ。ということにする。

「わかった」

 平静を装って、細い背中を見送って。

「いつの間にそんな仲良くなったわけ」


 店長の言葉は無視を決め込む。

「おまえ、声かけたの?」

 更に追求されて渋々振り返ると、にやにやと笑った店長の顔。

「…かけられたんですよ」
「ふーん。それで?」
「別になんもないです」
「この前二人でいるの駅で見たよ」
「あ、そうですか」

 …まさか見られてたとは。

「なんだよ。詳しく聞かせろよ」
「嫌ですよ」

 俺は即答すると、レジカウンターから逃げるように出た。

 店長がおもしろそうに見ている視線を感じつつ、雑誌の整理をする。…なんだってこの店はこんなに暇なんだ。

 内心悪態をつきながら残り4時間のバイトを終えて、着替えてすぐにメールを見た。


『動物園に行かない?』

 一瞬考えてから、

『写真撮るの?』

 そう送ってみると、

『そうだよ』
 
 すぐに返事が返ってきた。

 なんだ、デートじゃないのか。

 少々がっかりしつつ、約束は明後日の土曜日になった。今回も前と同じ、『もしも晴れたら』という条件付きだけど。

 …海に行った日からはもう、2週間が経っていた。晴れてくれないと困る。
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