INSIDE BLUE


「いらっしゃいませー」

 自動ドアが開く音に反射的に言いながら、カップラーメンを補充する手は止めずに入り口を伺う。

 ――またきた。あいつ。

 淡いピンク色の長財布を片手に、このコンビニに毎日のように来る女の子がいる。
 まずは店内左端の紙パック飲料のコーナーに行って、その隣の位置のサラダやらなんやらが置いてあるコーナーに行って、レジ前のチョコレート菓子のコーナーに寄ってからレジに来る。

 今日も同じコース。女の子がレジに来るより微妙にはやくレジに入って、待ち構えるのもいつものこと。

「いらっしゃいませ」

 言いながら商品をレジに通し始める頃、「あとマルメンひとつ」これまたいつものように女の子は言う。

 レジの裏手にある煙草ケースの中からマルボロメンソールを取って、レジに通す。
 いつもとだいたい同じ金額を伝えて(サラダの値段なんかでいつも微妙に値段が違う)、ポリ袋に商品を入れる。入れながら、これもいつものことなのだけど、少々の観察をする。

 濃い茶色の髪は胸まであり、前髪はパッツンで、まるで人形みたいな顔立ちをしていて、線の細い体つきをしていて――、何よりも印象的なのが、切りそろえた前髪の下に見える瞳の色だ。

 商品をつめ終わったとほぼ同時に、女の子がちょうどの金額をトレーに載せる。色白の長い指の先は、いつも綺麗な桜色に塗られている。
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