INSIDE BLUE
「――ちょうどお預かりいたします。レシートになります」

 そして、レシートを渡す瞬間。
 女の子はいつもこちらの目を見て、自身の青い目を細めて綺麗に笑う。

「ありがとう」

 必ずそう言ってから、店を出て行く。

「あの子毎日来るよねー」

 なんとなく後姿を見送っていると、いつの間にか店長が横に来ていた。

「…そうですね」
「で、だいたいいつもおまえがレジを担当する」
「…たまたまでしょ」

 正直狙っていたが、この時間帯は店長が休憩に入るので必然的に俺になるのも事実だ。

「あの目カラコンかな?」
「…さあ。普通カラコンじゃないすか」

 気のない返事を装いつつ、実はずっとそれが気になっている。あまりにも顔が綺麗だし、なんとなくハーフかなにかな気はしている。

「気になってるくせにー」

 肘でつついてくる。うざい。
 無視を決め込んでカップラーメンの補充に戻るためにレジを出る。

「俺あの子の名前知ってるよ」
「え」

 思わず反応してふり返ってしまった。
 どう見てもコンビニの店長には見えない、人相の悪いヒゲ面がにやりと笑う。ちなみに体格もよく、制服を脱ぐともうちんぴらにしか見えない。

「知りたい?」
「ていうかなんで知ってるんですか」
「この前携帯代の振込みしたんだよ」
「…それで覚えたんですか?悪趣味ですよ」

 携帯代や電気代の、収納代行の用紙には本人の名前や住所まで書いてある。
 …まあ、担当したのが俺でも確実に覚えていたと思うけど。

「あんな美人そうそういないし気になるだろ?奏も知りたいくせにー」
「…で、」

 なんて名前なんですか、と聞こうとしたところで客が来た。

 仕方なくいらっしゃいませと事務的に行って、店長は仕事に戻れとひらひらと手を振ってくる。…なんだよ、そこまで言っといて。気になるし。

 内心溜息をついて、カップラーメンの補充に戻った。
< 3 / 28 >

この作品をシェア

pagetop