INSIDE BLUE
 で、現在に至る。

「え?それだけ?」
「うん」
「…なんかこうさー、自己紹介とか、なかったわけ?」

 ああ、そういえばそれをきいてみても良かった。名前しか知らないわけだし。向こうもそのはずだし。まあでも夜遅かったしな…。

「…まあ、今日メールするって書いてあったし、別にいいんじゃん?」

 そう言うと、ユウリは盛大な溜息をついて箸をつきつけてきた。

「おまえさー、やる気あんのか?」
「なんのだよ」
「チャンスじゃん!気になってたなら尚更。しかも超美人とか」

 前半は箸を振り回しつつ、後半は口をとがらせて箸をうどんに戻す。

 確かに美人だ。水原詩依自身がモデルでもおかしくなさそうなくらい。

 …趣味で写真とかいってたなあ。モデル探すくらいなんだから、最終的にはカメラマンにでもなりたいのだろうか。ていうか、むしろ自分で自分を撮ったほうがいいんじゃないだろうか。なんで俺に声をかけたんだろう。…よく考えてみると俺に声をかけた理由が最大の謎じゃないか?

「…その子何時くらいにいつも来るの?」

 水原詩依のことに思考を傾けていると、明らかに好奇心を含んだ目でユウリが言ってきた。

「…教えねー」
「なんで!」
「絶対見にくるだろ」

 お前ばっかりずるい、みたいなことを言った気がしたけどそれは聞き流して、うどんをすすることに集中することにした。

 ポケットの携帯が気になって仕方がないけれど、まだ震える様子はない。

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