映画みたいな恋をしよう
婚姻届と保険契約書の呪い
午後から雪らしい。
カーキー色の上着の襟を直し、俺は空を見上げる。
最近
青い空を見ていない。
湿り気のある風を受け
店の扉を開ける。
【才真佐釣具店】
親の代から続いている
小さな釣具店。
昔からある小さな商店街の中の、小さな釣具店が俺の財産。
財産?
鼻で笑って中に入る。
こんな小さい街の
こんな小さな釣具店を継ぐ気なんて、さらっさらなかった。笑えるくらいなかった。
実際笑ってた。
冗談じゃない。
こんなしょぼい町に留まるワケないじゃん。
都会に出てスカイツリーを眺めながら、酒と煙草と女と金におぼれてる……はずが、本気でおぼれて海に沈む。
撃沈。
今
親が残してくれたこの店が、唯一の財産。
適当に店を開き
適当にパチンコをして
適当に趣味のDVDを見て
酒を飲み
煙草を離さず
いつの間にか生まれてから40年。
いつの間にか
きっと死んでゆくのだろう。
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