映画みたいな恋をしよう

籍は入れたけど
俺達は変わらない。

猫にエサをやり
レンタル店に行き

食べて飲んで抱き合う。

何事も変わらない。

普通の日々。


「コウさん」
二階から彼女が呼び、俺は彼女の元へ行く。

6畳ほどの洋室がふたつ。俺と弟の部屋。
彼女は俺の部屋の窓を開き
足を伸ばして窓枠に座る。

アッシュグレーの髪がキラキラと光る。
まっすぐなまなざしは、遠くを見つめる。

「何見てる?」
近くに行くと、彼女は下界ををゆっくりと指差した。

「お店の玄関の真上だよね」

「だな」

「ここから落ちたら、まぁ二階だけど、コンクリートだから打ち所が悪かったら頭パックリいって死んじゃうよね」

「だな」

背中がゾクゾクして心地悪い。

「ケガしても大ケガだよね」

「まぁな」

「コウさん?」

「何?」

「どうして、私を突き落とさないの?」

優香は
俺の目をジッと見つめる。


【婚姻届と保険契約書】

俺が用意した

俺からの呪い。

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