映画みたいな恋をしよう
ひとしきり
泣くだけ泣いてから
「しらけた。コウさん、お茶入れて」
優香はムクッと起き上がり
ふらつきながら階段を下りて行く。
殺せなくて……ゴメン。
彼女の後を追い
下に降りると、すでに彼女は自分でお茶を入れて栗饅頭を食べていた。
猫は背中を向けて昼寝。
関わりたくないらしい。
だよな。
「コウさんは自分で入れてよね」
目をキッと吊り上げ、優香は俺をにらむ。
「はい」
40男怒られるの図。
自分でお茶を入れ
彼女の隣に正座する。
「借金どんだけ?」
冷たい口調に背筋が凍る。
「この家と土地を売っても、あと200万ほど足りない」
開き直って言うしかない。
「コウさんの借金?」
「弟が作った借金」
「バカみたい」
怒りながらまた饅頭に手を伸ばす。
その通り
バカだよな。
小学生のように頭を下げるしかない俺。
「保険金殺人やるんなら、もっと手早く上手にやりなさいよ」
「ごめん」
「せっかくこっちがその気になって、殺されてやろうとお膳立てしてんのに。お茶!」
眉間にシワ寄せ湯のみを出され、俺はいそいそと立ち上がり台所へ逃げる。
妙な展開になってきた。
優香の前にお茶を入れて出すと
「コウさんの役に立って、死ねると思ったのに」
強気の表情を一変し
泣きながら身を崩したので
俺は彼女を支えて胸に抱く。
細い肩が震えてた。