映画みたいな恋をしよう
「私、半年前まで……全然違ってたんだよ」
静かな声が部屋に響く。
優香は愛情を受けて育ったひとり娘。
大好きな母親を大学生の時に亡くし、相性が良いとはいえない父親とケンカして家を出て、忙しい仕事に没頭し、ついでに不倫にも没頭したようだ。
「最近はたまに家に帰って、お父さんの世話とかしてたんだ」
嗚咽を抑えながら
俺の胸中で
目を閉じて語りを続ける。
去年の夏
父親が倒れ
脳梗塞を起こし入院。
心臓の病気もあり
身体もボロボロで治療もできず、そのまま一ヶ月入院して命を終えた。
「入院の最初に、お父さんの弟がいてね『もう先も見えなくて、いつどうなるかわからないから、仕事を辞めて世話をしろ』って言われて。でも、私はバカだから、正直に『仕事があるから、できる範囲になるけど傍に居れる時は居る』って答えたんだ。そしたら叔父さんは、その場では納得してくれた」
優香は正直な女。
その場しのぎの嘘は苦手。
大事な顧客をかかえていたけれど、仕事も休みをなるべく取り、寝る間も惜しんで看病したらしい。
それでも終わりは来る。
「自分では満足した。叔父さんも色んな手続きとかしてくれて、感謝していたのだけれど」
酒の力か
人間の裏と表か。
一生懸命、優香の力になってくれた叔父さんは、父親の四十九日で優香に怒鳴ったそうだ。
『父親の命より、仕事の方が大切か?こんな娘ならいらんかった!死んだ兄さんが泣いてるわ。お前なんていらんかった』と、その時の事を言われたらしい。
「言われて、もう自分がどうでもよくなった」
当たり前だけど
その時傍にいなかった
自分を悔やむ。