映画みたいな恋をしよう
「にゃぁ」と猫が鳴き
優香は「ごめんね猫」って、無駄にティッシュをガンガン取り出し、涙を拭いて俺の胸から顔を上げる。
「コウさんの泣き顔って」
「うん」
「汚い」
こんな時
どんなリアクションをすればいいのだろう。
優香はテーブルを自分に寄せ、煙草を一本くわえる。
そして
実に美味そうに煙を吐き出す。
「煙草を覚えたのが、3ヶ月前からなんだ」
じっくり指に挟まれている
火の点いたマルボロを見直していた。
細く長い紫煙が揺れる。
「お父さんが吸ってたから真似した。そしたら急に手入れをしていた長い髪も嫌になって、この色にしてバッサリ切ったら楽しかった」
「似合うよ」
「ありがとう」
「ひとりで大変だったな」
「それも人生だから。って、コウさん……いつ私を殺すの?」
ふいに言われて
俺は店に行き
俺の呪いである
婚姻届と保険契約書を優香の前でビリビリに破く。
猫が興奮して、雪のように舞う紙と遊びたくてジャンプする。
「コウさん?」
「優香と一緒に長生きする」
言霊というのがあるのなら
世界中の神様に聞いてもらいたい。
これが俺の言霊。