映画みたいな恋をしよう

「葬式でもこんなに泣かなかった」

黄昏が窓の外に映った頃
優香は笑ってそう言った。

「コーヒー入れようか」

「うん。ちょっとその前に」

優香はもう一度鼻をかみ、俺に向かって正座する。

「コウさんの借金って、いつから払ってるの?元金は?利率は?どこから借りてる?連帯保証人なの?」

次から次へと
言葉の矢が降る。

「急に返済しろって言われたの?着実に同じ金額払ってるんでしょう?どうして急に脅されてるの?」

目つきも鋭く
獲物を追いつめるような雰囲気である。

「かなり前からけっこうな金額払ってんでしょう。契約書は読んでるの?他の人に相談した?」

相談も何も
弟がその時勤めていた会社の金を横領し、返済の為に連帯保証人になって、もう15年。

「契約書見せて」
優香に言われ、俺は押し入れの奥の奥に入れてある、見るのも嫌な借金の契約書を優香に差し出す。

弟に連れて行かれた薄暗いビルの3階。そこで契約して印鑑を押した。思い出すのも吐き気がする。

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