映画みたいな恋をしよう
優香は何も言わず
米粒より小さな字の乙やら甲やら、ワケのわからない文字を流れるように見て

「紙と鉛筆と計算機」

ボソリと俺に言い、俺は猫を踏みそうになりながら用意する。

そしてカリカリと計算式を書いてから
5分後
どこかへ電話をかけた。

「そっか、やっぱりブラック。ごめんね忙しいのに。警察が入りそうだから、最近焦ってきたんだね。近いうち会社ごと無くなるから取り立てがキツくなったと……いやごめんね。え?うん元気だよ。現場復帰?しないしない……」
笑いながら彼女は電話で会話をしてるけど
電話を切ると
表情が変わる。

「過払い金の額がハンパない。どんだけカモにされたかったの?」

タメ息混じりの冷たい声だった。

「え?」
ワケもわからず
そんな返事をしていると、優香は自分のバッグから名刺を一枚乱暴に出し、俺に放り投げる。

写真入りの高そうな紙で
綺麗な英文字が印象的だった。

髪をまとめ
どこぞの賢く美しい女性の写真の名前は

穂積 優香。

職場はオフィス街のど真ん中
特に目立つ高級ビルに事務所を構えている。

誰もが知っている
大きな法律事務所。

穂積 優香の肩書は
マネージング・パートナー。

よくわからないが


偉い人らしかった。


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