映画みたいな恋をしよう

いつも行くレンタル屋

平凡な売れない釣具屋オーナーである、40男の趣味は映画観賞。

映画館に行く意欲はなく
レンタル店専用。
アダルトも借りれるし。

その日も
あてもなくブラブラと何を借りようか、棚を流していた。

たまに明るいのもいいか
最近重いのばっかりだから

コーエン兄弟脚本の話題作を手に取ろうとすると、赤い爪が俺の手と被る。

ふと顔を上げると
女が横にいた。

黒のロングコートに大きな赤のストール。
シルバーアッシュのベリーショートに金のピアス。
小柄な顔に大きな目を丸くさせ、赤い唇で彼女は言う。

「あ、ごめんなさい」
可愛らしい声だった。

「いや、あ……どうぞ」
俺は手を引っ込めてそう言うと

「いえ、いいの。別のにするから」と、笑顔を見せて他の棚に行ってしまった。

味気ない
モノクロの世界から色を付けて飛び出たような

そんな鮮やかな女性だった。
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