映画みたいな恋をしよう
彼女はその場から去り
俺もDVDを手にして他の棚へ行き、他に何か借りようとウロウロ動く。

これと言って
特に今日は何もない。

さっきの彼女のイメージで【アメリ】なんてどうだろう。
おっさんが【アメリ】……やめよう。

一周してからアダルトでも借りて帰ろうかと思いつつ、虎と漂流した映画を手にすると

「あっ、それは……ちょっと」
背中から声が聞こえ
振り返るとコッソリまた隠れる。

さっきの彼女だ。

その反応が楽しくて
わざと色んなパッケージを触ってみると

「まだ許せる」
「それはウィル・スミスが息子の為だけに作った映画」
「後悔するよー」
「ラストスッキリしないよ」

うるさいくらいの天の声に笑ってしまう。

「じゃぁ何を借りたらいいの?」
そうと聞くと
彼女は嬉しそうに俺の腕を持ち、棚の奥へとドンドンと進み。

頬を染めながら【死霊のはらわた】を「はい」ってニコニコ笑顔で差し出した。

「サム・ライミが好きなの。ホラーダメなら、デ・ニーロもいいよ【タクシードライバー】にする?私も見たいなぁ」

って話になって

なぜかその後
我が家で一緒に見る事になって

なんとなく
ヤッてしまって

次の朝
姿が見えなかったから、帰ったかと思ったら

彼女は小さなトランクと、親の位牌と、【猫】という名の猫と共にやってきて……今に至る。

それが優香だった。
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