映画みたいな恋をしよう

彼女は自分の事を語らない。

だから俺も聞かない。

「心配してくれる人もいないし」

荷物を持ってここに来た日。
彼女は俺の両親の仏壇に「お邪魔します」と、自分の親の位牌を入れ手を合わせた。

「もう誰もいないんだ」
猫を抱き
寂しそうに彼女は笑う。

だからそのまま
優香と猫と一緒に過ごす。

ひとりと一匹の存在が
胸の奥で大きくなるのが怖かった。

カップめんを食べ終わり
互いに煙草を取り出して
食後の一本を、深く肺に入れる。

「また煙草上がるよね。それでもこの食後の一本は止められないんだよねー」

健康なんてクソ喰らえ……そう言いながら、優香は俺に青汁を飲ませる。身体にいいらしい。

名残惜しく吸い終わったら「さっきの続き」と優香が俺の身体に突進。

テーブルを手で追いやり
猫がいつもの事かと目を閉じた。

「コウさん」

「何?」

「大好き」


本当だ
キスしても煙草の味がする。

そうだね害はないだろう。

二本目を味わってる気分

そして
彼女を味わう。
< 6 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop