映画みたいな恋をしよう
「ただいまー」
買い物帰りの優香が家に入り、顔色の悪い俺をジッと見つめる。

「コウさんどうしたの?」

「……別に……」

子供のようにプイと横向き「店の方にいるから」と声をかけ、優香の目の前から逃げる。

「婚姻届と保険の契約書」
呪文のように口の中で繰り返し、店の窓から外を見る。

この平和な小さな商店街には似合わない、異質な男達を見る確率が高くなる。
いかにも借金取りだろう。
もっと変装しろよ。


「婚姻届と保険の契約書」
魔女の呪いのような言葉。

彼女の好きな
サム・ライミが監督した【スペル】ってホラー映画があったな、老女の呪いにかけられた女の話。

ギシギシと音を鳴らしながら壊れかけの椅子に腰をかけ、古臭い事務机の引き出しを開くと


婚姻届と保険の契約書が並んで入ってる。


呪いはここにある。

保険金殺人。

リアルな土曜ワイド劇場。



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