【完】適者生存

過去

【夏目双子の幼少期(10年前) 視点は紗夏】


「おはよう。」


私は既に起きていた沙捺に声をかける。


・・・相変わらず無愛想。


返事はない。


「ごはん、作ってあるから。


食べておいて。」


小さくうなずくとリビングへ向かった。


リビングに向かったのを確認して、私は台所に立った。


今日は京華(きょうか)さんが風邪で寝込んでいるので粥を作るつもり。


私はごぼうとニンジン、卵を入れた粥を作り京華さんへ届けた。


「ん、ありがとう。


もうすぐ食料の買い出しだっていうのに・・・


悪いね・・・。」


「いいえ、ちゃんとお体は大切にしてください。」


私たち夏目双子は涙に呪いを宿している。


そのため、夏神村では忌み子とされ、避けられていた。


私たちが暮らす家は山の中腹に立っており、食料は村へ買い出しに行かないといけない。


しかし、私たちは忌み子とされたため、村へ入れない。


見かねた京華さんが買い出しをしてくれるようになった。


「紗夏、食料はあと何日分あるかい?」


「えーと・・・、確か2日分くらいだったと思います。」


「2日・・・


何とか治りそうね。」


「ええ、そうですね。」


京華さんは薬の調剤師をしており、時折村へ薬を売りに行く。


薬の売り上げで私たちの生活を賄ってくれる。


私たちが生きるために必要不可欠な収入。


京華さんはそれを全額、渡してくれる。


その代り、食事を作ってという条件のもとだけど。


「お食事、美味しかったわ。」


「それじゃ、鍋を下げますね。」


私は盆に載せた鍋を持ち、調理台へ向かった。


鍋を洗い、乾かす。


「よし・・・っ。」


家の窓から外を覗き、大体の時刻を把握する。


「んー・・・1時回ったくらいかな・・・。」


「姉様。」


後ろから声を掛けられる。


「ん・・・?


・・・ああ、沙捺。


どうしたの?」


「明日、儀式の間へ向かいましょう?


・・・明日は私たちの生誕日。


7つになりますね。」


「・・・そうだね。」


涙に呪いが宿るのは先祖代々だそう。


夏目家は代々巫女の家系。


・・・まだ、子供だから巫女職には就かないけど。


でも、7歳になったら別。


7つの儀式を行うことで巫女職に就く権利を正式に夏神から受け取る。


「・・・・・・」


儀式には、注意点がある。


一つ、儀式を行うには夏目の呪いが必要。


二つ、儀式を行えば自らを失う可能性がある。


三つ、儀式を行えば先代巫女と魂が合わさり、意思が共有される可能性がある。


これが、京華さんから聞かされた注意点。


一つ目は条件を満たしている。


二つ目は・・・、わからない。


たぶん、三つ目と同じような内容だと思う。


先代巫女と意思が合わさることで、本来の自分の気持ちが失われるということかな。


私は明日が不安で仕方がなかった。


ベットに座り込み、考え込む。


今の自分がなくなれば沙捺のことは忘れてしまうの・・・?


京華さんのことも忘れちゃうのかな・・・。


考えているうちに睡魔が襲った。


ベットに沈み込み、眠りに身を委ねる。
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