【完】適者生存

7年前の真実

「本当に・・・夏神村なの・・・?」


「ええ、夏神村になります。」


民家は崩壊し、木々もあちらこちらで倒れている。


道は小さな枝や湿り切っている枯れ葉などで埋め尽くされている。


さらに道の端々に小さな沼が複数個ある。


10年前の夏神村は道はきれいに掃除されていて、木は等間隔に植えられて村人らによって大切に育てられていた。


沼なんかもってのほか。


時々内緒で村に降り、村の様子を見ていたけれど、こんなに汚れている村は初めて見る。


「・・・ふふ、廃村になったのには理由があります。」


夏神村のことを廃村、と表現した。


・・滅んでしまった・・・?


「夏神村を廃村にまで追い込んだのは実質、沙捺様とお考えくださいね。


・・・9年前、つまり紗夏様がこの村を去ってから1年後に滅びと再生の儀が沙捺様の手によって施されました。


そして滅びはその2年後、つまり今から7年前に始まりました。


一週間足らずで村人は全員死に、民家や木々も今日まで7年間ほったらかしの状態です。


そして、再生は7年後、つまり今日行われます。」


「え・・・・?」


再生が今日・・・?


それに沙捺がこの村を滅ぼしたなんて・・・。


信じられない。


本当にそうなの・・・?


いくら沙捺とはいえ、そこまでするの・・・?


私の心の中で感情が揺れ動いた。


・・・沙捺を信じたい。


けれど遙香が言っていることに偽はないと思う。


実際、この村はほぼ廃村といっても過言ではない。


信じるか、信じないか。


私の心はその狭間(はざま)で揺れ動いた。


「ふふ・・・、立ち話もなんですから、歩きながらお話ししましょう?」


「・・・はい、そうしましょうか。」


しばらく進み、夏神神社へ到着する。


「希美たち、おいで。」


そういうと、2人の少女が遙香のもとへ駆け寄った。


「・・・此方が夏目紗夏さまですか?」


黒髪の長い髪の毛にぱっちりとした目、薄い唇。


「あなたは・・・?」


「紹介が遅れました。


私、夏目希美(のぞみ)と申します。


こちらは夏目望美(のぞみ)、私の姉となります。」


「・・・私と同じ立場・・・?」


「ええ、私も呪われた巫女となりますね。


あなたが400代目ですので、私たち双子は401代目となります。」


「・・・そっか。」


「ええ、先に説明しておきますが、この村で生まれた双子は全員呪われた巫女です。


そのことはすでにご存じ・・・ですね?」


少し笑いながら妹の希美が言う。


「・・・はい、知ってます」


「まだ10の私たちに敬語はやめてください。」


姉の望美が言う。


「・・・ごめんね。」


「いいえ、別に構いませんが・・・。」


「話を続けてもいい?」


希美が言う。


「・・・ええ、はい。」


「私たちは3年前に既に儀式を済ませました。


巫女は代々儀式を行うものです。


ですから、あなたは既に禁忌を犯しています。


・・・私はあなたのお姉さまである沙捺様同様、選ばれしものです。


早々に儀式をお済ませください。


夏神様より貴女に言伝もございますよ?」


「あなたが選ばれしもの・・・?


それに禁忌って・・・。」


「ええ、私は夏神より選ばれたものです。


それと、禁忌ですが・・・。


儀式当日に儀式が姉、妹、どちらかが行わなかった場合、その日から5年のうちに儀式を済ませなければなりません。


これは夏神が定めた力の保持期間です。」


「力の保持期間・・・?」


「・・・ええ、夏神は巫女より均等に力を吸い続けます。


力を吸い取られる条件として7つを越し、なおかつ7つの儀式を終えたもの、です。


しかし、紗夏様は儀式を終えてないので条件に当てはまりません。


そのため吸い取るバランスが崩れます。


片方が儀式を行ってなくても力を保持できる期間は1830日、約5年間です。


・・・夏神は5年の間に儀式を行わないことを禁忌と定めました。」
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