【完】適者生存
「はい、構いません。」
「ではこちらへどうぞ。」
そういって望美は林の中へ入っていった。
林の中には日が殆ど差さず、真っ暗。
しかし望美は歩みを止めることなく進んでいく。
「あの・・・、望美ちゃん・・・」
「はい?
なんですか?」
「大丈夫なの・・・?
すごく不安なんだけど・・・この林道・・・」
「・・・ああ、この辺の土地勘はあるつもりですからね。
よければ、手を引きましょうか?」
「・・・うん、お願いできる?」
望美は私の手を取り、歩を進める。
しばらく歩き、林が開ける。
林の先には何軒も民家が立ち並んでいた。
「ここは・・・?」
「土地管理組合の民家です。
・・・まあ、滅びと再生の儀を行ったのは組合の方々が発端なんですけれどね。」
「組合・・・。」
「ええ、そうです。」
私は並ぶ民家のうち、一軒に視線が惹きつけられた。
特に特徴のない、普通の民家。
しかし、何かを感じる。
私はそっと足を向かわせる。
「・・・紗夏様!
向かってはなりません!」
そういわれると同時に私は民家の扉を開けた。
至って普通。
民家の中へ足を入れる。
少し空気が変わる。
しかし、気にしない。
私は扉を開け、一番に目に入る木製の机に目を移す。
机の上には様々な紙が散乱していた。
一つ手に取り、読む。
「この村には秘密が多すぎる・・・?」
よくわからない。
紙を再び机の上に置き、周りを見渡す。
初めに見た村の民家よりはまだマシだが、壁はボロボロになり今にも崩れそう。
床には砂埃やホコリ、木材が散らばっていた。
なんとなく机の下に目をやると、あるものが目に入った。
・・・これは、雅さんがお気に入りの茶碗・・・?
淡い紺色に白の斑点模様。
・・・うん、間違いない・・・。
これは雅さんがお気に入りの茶碗だ。
私は茶碗を手に取り、眺める。
とてもきれいな模様は見ていてうっとりする。
茶碗の中身を見てみるとメモ用紙が四つ折りになって入っていた。
私は悪いと思いながらもメモ用紙を開き、中身を見た。
・・・土壁を見ろ・・・?
私は部屋の壁を見渡す。
すると一か所だけ、不自然な壁があった。
「・・・紗夏様。」
望美が後ろから声をかける。
「・・・何?」
「・・・やはり秘密を隠し通すわけにもいきませんね。」
「・・・どういうこと?」
「全てをお話しいたします。
・・・先ほど、この民家の並びはすべて土地管理組合の民家、そう申し上げましたが・・・
あれは真っ赤な嘘です。
本当は怪異を調査する協会が勝手に建てた物です。
この村は、忌み子の文化と余所者嫌いの文化が根づいています。
あなた方はもちろん、協会の者にはあからさまに避けていました。
余所者が入り、村人は代表者と協会の代表者で話し合いをし、出て行ってもらうよう説得するという結論を出しました。
・・・そして、協会は話し合いに応じませんでした。
この村には華の舞という独特の文化があります。
華の舞は代々平野家・・・、遙香お姉さまの家系の方が踊る舞です。」
華の舞・・・
こっそり見たことがある。
村の中心に位置する広場にある小さなステージのような場所で私と同じくらいの年の女の子が優雅な舞を披露していた。
その女の子は遙香だったのか。
「それで、滅びと再生の儀のきっかけになったのは協会側が舞をビデオカメラで撮影したのです。
華の舞は代々、夏神への感謝の意を舞に表すということで神聖な舞とされています。
もちろん、部外者・・・余所者がビデオカメラで撮影するなどは夏神への冒涜とも捉えられます。
村人は反発し、協会を無理に村から追いだしました。
しかし、夏神の怒りを買ってしまいました。
夏神は村へ不幸が降りかかるようにしました。
沙捺様はこれ以上、不幸が降りかかってしまえば村は滅び、自身も滅んでしまうと考えました。
ですから、滅びと再生の儀を行いました。
・・・それに加え、夏神の怒りを収める方法として村を滅ぼす、ということを夏神は提示しました。
余所者を村へ入れた村人への天罰だそうです。」
「ではこちらへどうぞ。」
そういって望美は林の中へ入っていった。
林の中には日が殆ど差さず、真っ暗。
しかし望美は歩みを止めることなく進んでいく。
「あの・・・、望美ちゃん・・・」
「はい?
なんですか?」
「大丈夫なの・・・?
すごく不安なんだけど・・・この林道・・・」
「・・・ああ、この辺の土地勘はあるつもりですからね。
よければ、手を引きましょうか?」
「・・・うん、お願いできる?」
望美は私の手を取り、歩を進める。
しばらく歩き、林が開ける。
林の先には何軒も民家が立ち並んでいた。
「ここは・・・?」
「土地管理組合の民家です。
・・・まあ、滅びと再生の儀を行ったのは組合の方々が発端なんですけれどね。」
「組合・・・。」
「ええ、そうです。」
私は並ぶ民家のうち、一軒に視線が惹きつけられた。
特に特徴のない、普通の民家。
しかし、何かを感じる。
私はそっと足を向かわせる。
「・・・紗夏様!
向かってはなりません!」
そういわれると同時に私は民家の扉を開けた。
至って普通。
民家の中へ足を入れる。
少し空気が変わる。
しかし、気にしない。
私は扉を開け、一番に目に入る木製の机に目を移す。
机の上には様々な紙が散乱していた。
一つ手に取り、読む。
「この村には秘密が多すぎる・・・?」
よくわからない。
紙を再び机の上に置き、周りを見渡す。
初めに見た村の民家よりはまだマシだが、壁はボロボロになり今にも崩れそう。
床には砂埃やホコリ、木材が散らばっていた。
なんとなく机の下に目をやると、あるものが目に入った。
・・・これは、雅さんがお気に入りの茶碗・・・?
淡い紺色に白の斑点模様。
・・・うん、間違いない・・・。
これは雅さんがお気に入りの茶碗だ。
私は茶碗を手に取り、眺める。
とてもきれいな模様は見ていてうっとりする。
茶碗の中身を見てみるとメモ用紙が四つ折りになって入っていた。
私は悪いと思いながらもメモ用紙を開き、中身を見た。
・・・土壁を見ろ・・・?
私は部屋の壁を見渡す。
すると一か所だけ、不自然な壁があった。
「・・・紗夏様。」
望美が後ろから声をかける。
「・・・何?」
「・・・やはり秘密を隠し通すわけにもいきませんね。」
「・・・どういうこと?」
「全てをお話しいたします。
・・・先ほど、この民家の並びはすべて土地管理組合の民家、そう申し上げましたが・・・
あれは真っ赤な嘘です。
本当は怪異を調査する協会が勝手に建てた物です。
この村は、忌み子の文化と余所者嫌いの文化が根づいています。
あなた方はもちろん、協会の者にはあからさまに避けていました。
余所者が入り、村人は代表者と協会の代表者で話し合いをし、出て行ってもらうよう説得するという結論を出しました。
・・・そして、協会は話し合いに応じませんでした。
この村には華の舞という独特の文化があります。
華の舞は代々平野家・・・、遙香お姉さまの家系の方が踊る舞です。」
華の舞・・・
こっそり見たことがある。
村の中心に位置する広場にある小さなステージのような場所で私と同じくらいの年の女の子が優雅な舞を披露していた。
その女の子は遙香だったのか。
「それで、滅びと再生の儀のきっかけになったのは協会側が舞をビデオカメラで撮影したのです。
華の舞は代々、夏神への感謝の意を舞に表すということで神聖な舞とされています。
もちろん、部外者・・・余所者がビデオカメラで撮影するなどは夏神への冒涜とも捉えられます。
村人は反発し、協会を無理に村から追いだしました。
しかし、夏神の怒りを買ってしまいました。
夏神は村へ不幸が降りかかるようにしました。
沙捺様はこれ以上、不幸が降りかかってしまえば村は滅び、自身も滅んでしまうと考えました。
ですから、滅びと再生の儀を行いました。
・・・それに加え、夏神の怒りを収める方法として村を滅ぼす、ということを夏神は提示しました。
余所者を村へ入れた村人への天罰だそうです。」