【完】適者生存
「姉様、・・詳しい方法はもうお聞きになったのでしょう?


・・・私のためにも。


・・・後世の巫女のためにも。


私は望美たち以降の巫女の幸せを願いたい。


・・・ま、巫女はもう生まれないかもしれないけどね。


覚悟を決めたら、来て。


私は広場で待っている。


決心がついたら来て。」


沙捺はそれだけ言い残し、神社の広場に行った。


「・・・紗夏ちゃん、大丈夫?」


雅さんが優しい声をかけてくれる。


「大丈・・・夫・・・です。」


「・・・紗夏さん、本当に大丈夫なの?


そうは・・見えない。」


「本当に・・・大丈夫なの。」


自然と涙があふれる。


すっかり汚れきった巫女服のたもとで拭う。


決心をした。


・・・沙捺のためにも。


・・・私は重い足取りで神社の広場へ向かった。


神社の広場には既に沙捺がいた。


沙捺は私に気付くと、口を開いた。


「姉様、決心がついたのですね?


・・・私が言うのもなんだけど非常に辛いんでしょう?


・・吹っ切って。」


沙捺は私に抱き着いた。


「こんなことをするのは・・12年ぶりくらいですね・・・。」


「・・うん、そうだね・・・」


私も沙捺の肩に手を回す。


「沙捺、ごめんね・・・!」


私は肩に回した手を首に動かし、少しずつ力を込める。


沙捺は徐々に、徐々に苦しそうな顔を浮かべる。


だけど、苦しみの顔の裏には笑みがある。


「あ・・ね・・・さ・ま・・・


だ・・い・・・す・・き・・・で・・す・・・」


沙捺は急に重くなった。


『おめでとう、これで同等の悲しみを味わったわね。


・・・思う存分泣きなさい、悲しみなさい。


あなたにかけられた呪いはもう私でも解呪できないわ。


だけれど、一定時間だけは無効にできるの。


ふふ、悲しめばいいわ・・』


脳裏に木葉の声が聞こえる。


私は沙捺の体を寝かせ、まぶたを手で優しく閉ざす。


呼吸音は一切聞こえない。


「・・さ・・な・・・つ・・・


さ・・・な・・・つ・・・!」


私は泣きじゃくった。


すべての鬱憤(うっぷん)を晴らすように泣いた。


沙捺を失くした悲しみ、村が滅んでしまった悲しみ。


いつの間にか広場の入り口にいた望美、希美、それに遙香も涙を流した。


「僕たちは・・・向こうにいるね。」


雅さんと百合香は広場を出て、神社の方に向かった。


望美たちは沙捺の亡骸に擦り寄った。


「沙捺様・・・さな・・・つ・・・さ・・ま・・!」


誰もが沙捺の死を悲しんだ。


自分自身の手で殺してしまったこと。


とても罪悪感を覚えた。


止めどなく涙が溢れる。


「沙捺・・・沙捺・・・!」


穏やかに微笑んでいる沙捺の表情はとても愛おしく感じる。


これで・・・夏目の呪いの連鎖が終わる。


――最愛の双子の妹の死と引き換えに。
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