フェリース

「あ～ぁ、ご愁傷様」
《え？》

隣から聞こえてきた言葉に、イリスは思わず振り向く。


「庭にはね、ゾディアック最も嫌うモノがいるんだ」
《へー何だろう。
ん？………そ、それ、智紘は……》

「もちろん知ってるよ」


クスクスと愉快そうに笑う男と、智紘の完璧なまでの嘘を知ったイリスは、必死に笑みを作りながら、


《（絶対、こいつ等に逆らわない）》


と、心に誓った。














「さて、紹介するか。
この黒猫は、イリス。数週間前から俺の相棒」


《……ども》


ゾディアックたちと表面上の和解をし終えた智紘は、イリスを自分のもとに呼び、紹介した。


「で、こいつらは右からアリエス、タウラス、ジェミニ、キャンサー、レオ、バルゴ、ライブラ、スコーピオン、サジタリウス、カプリコーン、アクエリアス、ピスケスだ。みんなまとめてゾディアック。

あと、そこの狸ジジィは日向 静牙（ひゅうが せいが）だ」


１人ずつ示しながら紹介する。

「ちなみに、ちー君の保護者♪」
「意外だろ？こんな喰えないジジィが俺の保護者なんて…」
「やーん！ちー君そんな、つれないこと言わないでよー」

（（（（（すごく納得なんですけど。））））

その場にいた智紘と静牙以外の心の声が一致した瞬間だった。


「で？何で俺を呼んだんですか？」

「え～？もう本題入っちゃう？せっかく感動の再会なのにぃ」


ぷくっと頬に空気を入れ、何故かギャル口調で絡み付いてくる静牙をベリッと剥がした智紘は、へらっと笑った。

「俺は本題聞かずに帰ってもいいんですけど。俺を呼んだ理由に大して興味はないし、面白くもなさそうだから。そして何より、今俺はもの凄く眠い」


あくびを噛み殺しながら静牙に目をやる。

「しょうがないなぁ～。
ちー君。ちょっと行ってきてほしいところがあるんだけど」