マジで恋した5秒後
手で頭を押さえて、
チラッと後ろを窺う。
さっき私の横を通った人。
フワッとしたなんとも言えない香りの行先を辿る。
あれは香水って程きつくない香り。
きっと柔軟剤だ。
市販の柔軟剤だろう。
でも…その香りがして、通り過ぎた瞬間の胸の高鳴り。
胸が高鳴った瞬間に、その香りは私にとってどの高級柔軟剤よりも、どの高級料理よりも好きな香りになった。
「はい、平野君これね」
横目で見えるのは、3年担任の女教師の机とそこに座る本人。
その人の横で、この学校の学ランを着て教師からノートを受け取っているのは…
スラッと背が高くて、短めの黒髪をおしゃれにセットして黒縁メガネを掛けた男子。
…どこかで見た事ある顔だけどきっと3年だ。
「ちょっと、野原さん」
私は座る野原の顔に手と顔を近づけて、
声小さめに話しかける。
内緒話のポーズだ。