手に入れたいのはお前だけ。



「やっとふたりきりになれた」



あたしの心の声が、出てしまったのかと思った。



由くんを見ると、笑顔であたしに手を差し出している。



ハテナを浮かべながらその手を握ると、優しく握り返してくれた。



「ごめんな、相手してやれなくて」



「え、ううん……」



「忽那、何言っても言うこと聞かないんだよ」



困ったもんだよな、と由くんが笑った。



他の人のことで、そんな風に笑ってほしくない。



初めての気持ち。
わがままかもしれないけど胸が痛くなった。



< 219 / 322 >

この作品をシェア

pagetop