手に入れたいのはお前だけ。



だけど今日の千澄は、なんだかいつもと違って元気がないみたいに見える。



笑顔も、そんなに輝いてない。



……何かあったのか?



千澄はときに繊細なところがあるから、こわれものを扱うみたいに丁寧に接しなきゃいけない。



「千澄」



「なあに?」



「元気ないよ」



そう言って頭を撫でたら、千澄の大きな瞳から涙がこぼれた。



「……どうした?」



千澄が泣くなんて、何か事情があるからだ。



わかっているから、優しくなだめるように言う。



< 310 / 322 >

この作品をシェア

pagetop