Melty Lesson
24歳の社会人が何やってるんだろう……って、考えてしまう。
レッスンを辞めて、この片想いは胸の奥に隠してしまわなきゃいけないんじゃないかなって思うの。
「じゃあ、ここの小節から最後まで通して今日はおわりにしましょう」
隣から聞こえる、淡々とした先生の声。
「はい……」
と答えて、鍵盤に両手を置き、指示された小節から弾き始める私。
一つ、一つ、鍵盤を押さえる度に虚しさと切なさが込み上げてくる。奏でる音が私の代わりに泣いてるみたい。
でも、ここで涙を流すわけにいかない。
ちゃんと弾いてしまわなきゃ、って思う。涙をこらえながら楽譜をおって、微かに震えてくる指先に力を込める。
と、
「待って」
「……っ」
指先から全身に一気に緊張が走る。
鍵盤の上で、私の右手の甲に重なる先生の手。