舞う風のように
ーーーー夜、長州藩邸を訪ねた。
「誰だ。」
出て来た男が怪訝そうに問いかける。
「佐原 八尋です。連絡は行っていると思います。」
笑顔の仮面を被る。
ちなみに、佐原はここでの偽名。
途端に男は、人の良い笑顔を見せた。
「そうかそうか、君が橘くんの知り合いか。聞いていたよ。さぁ入りなさい。」
その言葉に安心し、頭を下げる。
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
礼儀は大切だ。生意気だと思われたらこの仕事は終わり。
「そんなに硬くならなくていい。ほら、入れ。」
返事をすると、男に続いて藩邸に足を踏み入れた。