舞う風のように
音が消えた。
兄が立ち止まる。
その顔は蒼白で…
「ここで待ってろ。」そういうと兄は走って行ってしまった。
「ちょっ、兄さん!何なの…、」
嫌な予感しかしなかった。
慌てて由紀も、兄の後を追って走り出す。
再び始まった金属音。
やっぱり、父は…
分かってしまった。だけど、嘆いている暇はない。
あの父が負けたのだ。
兄が1人で挑むにはキツイだろう。
すぐに援護しなければ…
音は玄関から聞こえた。
玄関近くの柱の陰に隠れた。
そっと覗き見た先は、血で真っ赤に染まっている。
倒れた骸は…3つ。
敵と見られる浪士と、父。
父は頑張ったのだ。
亡くなる前に2人も倒した。
兄は今、2人の浪士と戦っている。
少し見ただけで分かる。隙が無い。
思った通り、相当な手練れだ。
ならば助太刀しない訳にはいかない。